息子の受験を終えて

22期生(2015年卒) 保護者  近野 涼子

 息子が中学受験に挑戦したいと言い出したのは、6年生の5月半ばでした。夫も私も中学受験の経験はなく、わが子も公立中学に通うものと考えておりました。フルタイム共働きのわが家ですが、だからこそ休日に家族でともに過ごす時間をずっと大切にしてきました。そんな中での突然の受験宣言!人生何が起こるか分からないものです。青天の霹靂とはこのことかと思いましたが、本人の意思が固かったため、親も覚悟を決め、受験に向け大きく舵を切る決心をしました。


 6月からエデュコに入会し、受験勉強を開始。おそらく誰よりも遅いスタートだったかと思います。他のお子さんたちが何年も通塾している中、残り数か月の仕上げの時期に合流することになり、決して容易ではなかったと思いますが、息子は中学受験界の奥深さに圧倒されながらも、一方で意外と楽しんでいる様子で、最後まで弱音を吐くことはありませんでした。


 息子の中学受験は、私自身の教育観を見つめ直す契機ともなりました。中学受験に挑戦するということは、中学・高校時代を過ごす環境を自分の力で手に入れるということ。わが子には様々な経験を積み、自分の頭で考え、主体性をもって行動できるようになってほしい。生涯を通じて互いに高めあえる仲間と出会い、ほんとうの意味での知性を身につけ、自分を磨き、社会に役立つ人材となってほしい。元来、私は、社会は多種多様な人々で構成されているのだから、少なくとも義務教育のうちは公立でと考えてきましたが、中学受験の意味と意義を考える中で、受験を選択することもまたひとつの在り方なのだと思い至りました。


 正味で8か月の短期決戦でした。客観的に見れば、無謀な取り組みだったとは思いますが、わが子の初めての大きな挑戦、結果がどうあれ、応援してやりたかった。最後まであきらめずに努力し続けた息子を誇りに思います。結果として、合格も不合格も経験できたことは、ほんとうにありがたいことでした。人生に無駄な経験などありません。不合格に涙したこと、惜敗後に雪辱を果たしたこと…受験を通して数々のかけがえのない経験ができた息子は、一回りも二回りも大きくなったように感じられます。


 息子が受験すると言い出したあの日を私は一生忘れることはないでしょう。あまりの唐突さに面食らいながらも、本人が本気なら一刻の猶予もないと考え、直ちに行動しました。今は便利な世の中で、インターネットでいくらでも情報は得られますが、ネット情報は、いかんせん玉石混淆、その精度を確かめる術はなく、審美眼と嗅覚を働かせるしかありません。

 成績によるクラス別授業が一般的ないわゆる大手塾は、まったく念頭にありませんでした。すでに階層化されている中に終盤から参入するのは得策ではないと考えたこと、偏差値偏重とならないことを重視したからです。こどもたちが寝静まった後にパソコンの前に座ること数時間、ピンときたのはエデュコだけ。それまで何とはなしに目にしていた志木駅階段の大きな看板は、なるほど中学受験塾の広告だったのだと、遅まきながら一致。その晩には、エデュコのホームページからメール問い合わせフォームにて塾選び説明会の参加申込みおよび資料請求をし、次の日、職場の昼休みにはエデュコに電話していました。間髪入れず、各クラスの体験授業を受け、息子の意思を再確認、すぐに入会したのでした。


 理念に共感し、いわば直感で、他の塾を見ることなくエデュコに即決しましたが、その判断は間違っていなかったと確信しております。体験授業を見学させていただきましたが、小学生のうちにこんなに面白い授業を受けられるだなんて羨ましいと思ったくらいで、実際、エデュコから帰ってきた息子に声をかけると、いつも決まって「楽しかった!」と言っておりました。夏期講習が始まると他のお子さんたちとの交流も増え、また学びも深まる中で、一段と楽しく通うようになりました。


 9月に答案練習会と合不合判定テストが始まると、月に1回は午前・午後と連続でテストを受けることになりました。朝起きたときには渋い顔をしていたはずなのに、合不合の帰り道にエデュコ生と会い「午後の答案練習会、行くでしょ?」と聞かれると、もちろんとばかりに笑顔で頷く息子を傍で見ながら、集団塾のよさ、エデュコの雰囲気のよさを実感していました。

 中学受験ビギナーな親としては分からないことだらけで、学習の進め方や学校検討など、その都度、個人面談で担任の齋藤先生に様々なアドバイスをいただきました。1月校の結果次第で2月1日の受験校を決めることになり、ダブル出願したチャレンジ校は結果として受けることはありませんでしたが、受験を終えてみれば「入って嬉しい学校、通わせて嬉しい学校を」と言っていただいたそのとおりとなり、心から感謝しております。

 さて、だいぶ前のことになりますが「子育て四訓」というのを目にしたことがあります。


1.乳児はしっかり 肌を離すな

2.幼児は肌を離せ 手を離すな

3.少年は手を離せ 目を離すな

4.青年は目を離せ 心を離すな


 長年、教育に携わった方の言葉だそうです。さすがにズバリ的を射ており、この的確かつ実践的な訓示にたいへん感銘を受けました。息子は今、この3から4に移行する段階にあり、だからこそ今後は、親はあえて一歩引いたところに立ち、わが子を信じて任せることになるのでしょう。子の成長は親としては嬉しくもあり、どこか寂しいものですね。短い期間ではありましたが、息子が自らの意思で高い目標に向かって努力するという得難い経験をまだ親が伴走できるこの時期に共有できたことに感謝したいと思っております。


 寒い中、入試日早朝から激励してくださった先生方、ほんとうにありがとうございました。エデュコ生ひとりひとりの手を握り、まっすぐ目を見て、心のこもった言葉をかけていただいている様子に、やはりエデュコでよかったと身に染みて思いました。息子にとっても、緊張や不安を和らげる絶大な効果があったと思います。


 中学受験なんて別世界のことと思っていた頃から、こどもたちの知的好奇心に応えようとするうちにいつしか増えていった学習マンガや図鑑、天文カレンダーや地図ポスターなど、期せずして受験に少しくらいは役立ってくれたかもしれません。他のことには口うるさくても「勉強しなさい」とだけは言ったことがない母でした。受験するにあたり、さすがに方針転換せざるを得ないかとも思いましたが、最後まで言わずにいられたのは、ひとえに受験勉強の進捗管理役を買って出てくれ、リビングで息子と二人三脚で過去問に取り組み、熱心に解説してくれた夫のおかげだと思っています。ほんとうにありがとう。お疲れさまでした。


  私がしたことといえば、塾の選択と塾弁作り、学校説明会や文化祭、オープンキャンパスに足を運んだこと、模試や入試の付き添い、学習計画表作成、全体のスケジュール調整と事務手続き、家族の体調管理、あとは新聞コラムの要約を少し手がけたくらいでしたが、まさに激動の数か月でした。親にとってもそうであったのだから、本人はなおさらでしょう。嵐は過ぎ、またいつもの日々が戻ってきました。息子は今、入学を心待ちにしています。新たなスタートを切る息子には、よく頑張ったね、おめでとう、そして、なかなかできない貴重な経験をさせてくれてありがとう、と言いたいです。


 そして何より、エデュコスタッフ、エデュコ生、家族や友人などエールを送ってくれたみんな、息子に関わってくれたすべての人に感謝したいと思います。ありがとうございました。